食と農のこと食と農のこと

笑顔の実り。 vol.86(2021年4月号)
たかはし よしおさん|67歳
藤井寺市沢田地区 髙橋 嘉男さん

やりがいを感じる農業

農業を始めたきっかけについてお聞かせください。

 私は徳島県の生まれで、実家は兼業農家でした。大阪で就職しサラリーマンをしていましたが、本格的に農業に携わるようになったのは、結婚をきっかけに妻の実家の家業であった農園に就農したことからです。  当時は明るくなったら働きはじめて、暗くなったら作業の途中でもやめるという昔気質の農業形態だったのですが、翌朝に前日残した途中の作業をやるのが自分には合わず、とてもしんどかったのを覚えています。

農業をしていて大変だったことは何ですか。

現在、農園では栽培期間中の無農薬・無化学肥料を徹底していますが、これを成功させるまでが一番大変でした。  この栽培方法に取り組もうと思ったきっかけは、父と私で一緒に作っていた野菜は、自分が子供のころに食べていた、祖母が作った無農薬の野菜と味が全然違うと感じたことからでした。  身体のためにも農薬や化学肥料を使わない栽培をしてみたいと興味を持ちはじめ、現在の栽培方法に挑戦しはじめました。当時、藤井寺地区には無農薬で栽培をしている人はほとんどいなかったので、父には強く反対されましたが「3年は黙って見ていてほしい」と頼み込み、栽培期間中に農薬を使わない栽培方法を成功させるため試行錯誤を繰り返しました。当時、参加した異業種交流会で酵素を使った有機肥料について教えてもらったのをきっかけに、実際に酵素を使った有機肥料を使って栽培をしている圃場を見学しに、千葉や九州等、全国様々な場所へ父を連れて行きました。土壌や環境が地域によって異なるので参考にするのは難しい面もありましたが、父にいろいろな栽培方法があることを見せて徐々に受け入れてもらえたことは良かったと思います。  また現在の栽培方法を始めた当初の3年間は虫との壮絶な戦いがありました。はじめはとにかく虫の被害を出したくなかったので、かなり神経質になっていましたが、途中から「食べられて当たり前、虫に食べられてしまう範囲を少しでも狭めよう!」とポジティブに考えられるようになりました。虫が出た部分は徹底してバーナーで焼いていったり、土づくりにこだわったりと手間を惜しまずコツコツと続けていくことで次第に克服していくことができました。出荷が出来るようになったのは栽培方法を変えてから3年目の時でした。

農業に対する思いをお聞かせ下さい。

 凝り固まった先入観を持たず、とにかくどんどん挑戦してみて受け入れることをモットーとしています。農業は答えが無いものなので、1足す1で2にも3にも4にもなります。「型にはまらないことが大事や」と従業員にもよく言っています。現在の栽培方法に変えてから、農業は楽しいなぁと思えるようになりました。同じことを繰り返していく農業ではなく、いろいろなことを取り入れて試行錯誤する農業が自分には合っていて、大変なこともありますがとても楽しくやりがいがあります。

これからの目標をお聞かせください。

 これからも楽しく働いていくことが目標です。仕事と休みのメリハリはとても大事だと思っているので、農園でもきっちりと休日を作っています。また、うちの従業員に圃場を任せていて主体性を大切に自分の好きなように育ててもらっています。失敗したほうが伸びると思いますし、バーナーで焼く事や酵素を使用することなどの基本さえ守ってもらえたらノーは言わないようにしています。週に一回必ずミーティングを行っており、作物の生育状態や仕事の内容を話し合う時間を作っています。現在、新たに加工品への挑戦もしていて、これからもしっかりと前を向いて農業をしていきたいです。
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