笑顔の実り。 vol.75(2020年3月号)
もりもと さだむさん|63歳
河内長野市石見川 森本 定さん
イチゴ作り一年生
イチゴを作ってみたい
就職後、森本さんは土日をメインに畑仕事を手伝っていた。実家では両親が米と野菜を作っており、田植えや稲刈りなど、農繁期は必ず田畑に通ったそうだ。状況が変わったのは、今から数年前だ。農地の圃場整備を行った影響で、田んぼの水はけが悪くなった。米を収穫する時、土がぬかるみ、コンバインが何度も歩みを止める。結局機械は使えず、手刈りをする年が続いた。手で稲を刈るのは重労働だ。そんな中、森本さんは勤めていた会社で定年を迎え、農地を継ぐことを考え始めた。米作りに苦労していたので、自分で何かを育てるなら、他のものを作りたい。思い切って、前から興味があったイチゴを作ることに決めた。
「イチゴ作りは未経験ですし、初期費用がかかるので、最初は家族に『大丈夫なの?』と心配されました。でも、最後は皆が頑張れと背中を押してくれました」イチゴを作るため、田んぼだった土地をならし、新しくハウスを建てることにした。温度管理や排水が出来る環境を整え、昨年の7月にハウスが完成した。会社を退職し、森本さんのイチゴ作りが始まった。
研修の日々
イチゴ作りのことは何も分からないので、誰か詳しい人に教えてもらう必要がある。森本さんが頼ったのは、高校時代の恩師だった。
「お世話になった先生が和泉市でイチゴ農園を運営していると聞き、イチゴ狩りに行ったんです。そこで先生にお願いして、研修を受け入れてもらえる事になりました」
昨年の7月から約3ケ月、農園に通う日々が続いた。研修は半日から1日で、苗の管理や栽培方法など、教えてもらうことは沢山ある。感謝の気持ちを込めて、最後には必ず掃除をする。
「最初は『葉かき』などの専門用語が分からず苦労しました。分からない言葉が出るたび質問して、色々なことを教えて頂きました」
3ケ月の研修を終え、いよいよ一人でイチゴを育てる時が来た。
イチゴの栽培スタート
通常、イチゴの苗は9月頃に定植し、11月頃から収穫が始まる。しかし、森本さんはケガなどのトラブルで研修が長引き、定植出来るようになったのは昨年の11月だった。遅くなったので迷ったが、恩師にも相談し、思い切ってイチゴを植えることにした。心配していたが、1月の中旬ごろから少しずつイチゴが実り始めた。本格的な出荷はまだ先だが、順調に成長している。
育てる品種はあすかルビー、章姫(あきひめ)、紅ほっぺ、女峰(にょほう)、さがほのかの5種類だ。ハウス内で蜂を放し飼いし、受粉させている。この辺りは夜になると冷え込むので、夜は暖房を入れて10~15度をキープしている。
「1日1回の水やりや無駄な葉を取り除く作業など、毎日やることがあります。まだ分からないことも多いので、教えてもらいながら育てています」
もう少し暖かくなると、森本さんにとって初めての収穫シーズンがやって来る。どの品種が一番美味しく出来るのか、試食するのが今から楽しみだと笑う。
まだ始まったばかり
安定して出荷し、栽培が軌道に乗るまでは、もう少し時間がかかるだろう。
「まだ作ることで精一杯ですが、いずれはイチゴ狩りを受け入れたい。お世話になった方のためにも頑張らないと」
森本さんのイチゴ作りは、まだ始まったばかりだ。