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笑顔の実り。 vol.101(2022年7月号)
すぎはら  よしまささん|68歳
河南町 一須賀地区 杉原 由眞さん

安全安心な農産物を提供したい

農業を始めたきっかけについてお聞かせください。

 私の小さい頃、この辺りはナスのビニールハウスや里芋畑が広がっていました。父が専業農家だったので、子供の頃から出荷用のナスの木箱の組み立てやビニール張りなどの作業を手伝っていました。将来は跡を継ぐものだと思っていましたし、周りの友人たちもみんな農業を手伝うのが当たり前だったので、幼い頃から農業は生活の一部でした。私が50歳の時、父が亡くなりました。当時、私は公務員として働いていたため、週末農業の形で自家用野菜と米を作っていました。60歳で定年してからは、農業一本で毎日コツコツと農産物直売所「あすかてくるで」に出荷しています。

農業を行う上でのこだわりをお聞かせください。

 安全安心で質の高い農産物を「あすかてくるで」に出荷するためには、常に情報収集をする必要があります。農業をしていると毎年何らかの病害虫に悩まされることが多いです。「あすかてくるで」の出荷者同士では、使っている肥料のことや栽培している農産物のことなどの情報交換をする機会が多く、とても参考になります。栽培がうまくいかず失敗してしまったときも「それ俺も失敗してん」「こうしたら上手くできたで」など会話から励まされ、アドバイスがもらえることもあり出荷者同士の交流はとてもいい刺激になっています。その他、農協の農業塾や栽培講習会なども活用して、野菜に病害虫が出たときは、TAC※1担当者に農薬や肥料についてなど専門的に聞けるので大いに助かっています。出荷者同士での交流で得た現場の情報と講習会やTACから得た専門的な情報を合わせ、自分の圃場に合った栽培方法を選択しています。立派に育った農産物を目にした時、「あすかてくるで」に出荷した農産物がたくさん売れた時、売り上げが良かった時の喜びは計り知れません。 ※1 TAC(たっく)……地域農業の担い手を訪問し、担い手の意見を営農事業に反映させるJA営農指導職員のこと

地域農業への想いをお聞かせください。

 地域とのコミュニケーションを充実したいという想いがあります。昔はこの地域も多くの住民がいて、活気がありました。やはり自分を育ててくれた地元への思い入れがあるので、子供も減り、人と地域の繋がりがどんどん減っていくのがとても寂しく感じます。農業を通じて地域のコミュニケーションを増やしていきたいと考えたときに、農協が組合員や地域住民との交流を図るために行っている「ふれあいプロジェクト」で地元産野菜のPRが出来ないかと当時の支店長に相談しました。これをキッカケに支店の「ふれあいプロジェクト」に参画し、地元産野菜のPRを兼ねて野菜を提供・配布する活動を農協と一緒に行ってきました。コロナ禍の期間はイベントが出来ず支店に農産物の提供をすることしかできませんでしたが、私は地域のための農協でないとダメだと思っているので地域の方に「あすかてくるで」や農協を通じて地元農産物の良さをもっと知っていただきたいです。

これからの目標をお聞かせください。

 「あすかてくるで」が出来たおかげで、市場向けの出荷が出来ない季節ごとにできる少量の農産物でも気軽に出荷でき、ありがたいと思っています。これからも消費者目線での出荷を心がけ、新鮮で安全安心な農産物の提供をモットーにJA、出荷者、消費者3者一体となって直売所を盛り上げていきたいです。そのために周年出荷をできるよう工夫をしています。端境期※2には「あすかてくるで」への出荷も少なくなりますが、端境期であっても品ぞろえを切らさないように取り組んでいます。また、ハクサイやキャベツのような重さがあって出荷に体力を使う野菜を少し減らす代わりに重さが軽いネギを増やすなどして出荷量自体は減らさないよう工夫しています。これからも地元を盛り上げるために出荷を続けていきたいです。 ※2 端境期(はざかいき)……野菜の収穫期と収穫期の間にできる、野菜を収穫できなくなる時期のこと
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