笑顔の実り。 vol.96(2022年2月号)
まつくら たかおさん|70歳
羽曳野市碓井地区 松倉 孝夫さん
農業者も変化しないといけない
農業を始めたきっかけについてお聞かせください。
私の家は、父が生産者から果物を買い付けて青果店などの小売店に卸すバイヤーの仕事をしており、母が水稲栽培を行っていました。子供の頃は母が遅くまで農業に励んでいたので、手伝わなあかんと思い、母の稲刈りを手伝って、月明かりの下でだて掛け作業をすることもありました。大学進学後は、大学に通いながら父の仕事を手伝い始めました。その後、碓井地区でイチジクの栽培が盛んになり始め、我が家も稲作からイチジク栽培に転換しました。
私は父から果物のバイヤーの仕事を引き継いだので農業は農繁期に手伝うくらいでしたが、12年程前から農地を引き継ぎ、イチジクと水稲の栽培を始めました。
農業をしていて大変だったことはなんですか。
両親から農地を引き継いだとき、私は農業初心者で、両親が二人でやっていた作業を私一人でやるのは大変でした。今まで農業は手伝うくらいだったので、初めはどのように栽培していいのかわかりませんでしたが、親戚や周りの専業農家に肥料のやり方など基本のことから教えてもらい、覚えていきました。元々自分なりに考え工夫したりするのが好きだったので、味や圃場の管理をこだわって工夫していくのは苦ではありませんでした。イチジクの防鳥用のネット張りひとつにしても、周りの農家さんが2人がかりでしているのを見て、私も何とか1人でやる方法はないか試行錯誤して、ようやく1人でもキレイに張れるようになりました。
イチジクの栽培で難しいことは水加減です。水加減が本当に
重要で、水が多すぎるとブヨブヨになってしまうし、生育期に雨が直接、実に当たると実が割れてしまいます。8月が気候的に一番難しい季節で、水分量は糖度にも大きく関係してくるので、一番気を付けています。
農業をする上でのこだわりをお聞かせください。
長年、果物のバイヤーをしていたので生産者側・消費者側の両方の声を聞いてきました。昔は大量消費の時代で果物ならなんでも売れていましたが、目新しいものや本当に美味しい高品質なものを求めているように思えます。時代の移り変わりと共に変化するニーズに農業者も変化していかなければ、生き残っていけないと肌で感じています。
この碓井地区ではイチジクの栽培が盛んなので、周りの農家さんを見て自分ももっと美味しいイチジクを作りたい!と思い、より美味しいイチジクを作るため日々の情報収集を大切にしています。イチジクの味を求めてこだわっていくのはやりがいがあって楽しいです。また、バイヤーだった時の性分なのか少しでも悪いものは出したくないので、出荷する前には必ず味見をして、これは出せる、出せないというのを判断しています。
卸している小売店の方から「松倉さんのイチジクにお客さんがついているから、自信持たなあかんで!」と言って頂き、自信を持てましたし、より良いものを作ろうと思えました。
地域農業に対する思いをお聞かせください。
地域農業についてはなかなか厳しい現状があると思いますが、近年、碓井地区には新規就農者として若い農業者の方が増えました。若い方が来るようになって、地域の雰囲気が明るくなり、自分の就農当初の気持ちを思い出し、懐かしく感じます。
今後の目標は、体が動く限り農業を続けていくことです。これからも「松倉さんのイチジクが欲しい!」と要望される限りは、美味しいこだわりのイチジクを作っていきたいです。