食と農のこと食と農のこと

笑顔の実り。 vol.94(2021年12月号)
もりかわ よしゆきさん|43歳
松原市丹南地区 森川 義之さん

ネギの常識を変えたい

農業を始めたきっかけについてお聞かせください。

私の家は代々農家で、父は役所に勤めながら、兼業農家で農業を引き継いでいました。父は「自分の好きなことをしいや」と言ってくれていたので、私はデザイン設計事務所に勤め、その後独立しデザイン設計事務所を立ち上げました。農業は小さい頃から身近な存在で自分もいつかは農業を継ぐだろうという気持ちでいたので、6年前に父が亡くなってからは、残された農地を継ぐため事務所をたたんで、大阪に戻り、専業農家として新たなスタートを切りました。

農業のこだわりを教えてください。 

 食べて頂ける方への安全安心を徹底し、自分が自信をもって出せるものを作りたいという思いで、難波葱・水稲・季節の野菜などの減農薬栽培を行なっています。手間もかかるし、家族には反対されましたが、苦労して作った甲斐もあり、味にも違いが出てくるようになりました。地方の大きな産地では農薬を使い、安定的に大量生産することが必要ですが、都市近郊の『大阪』で同じようにやってもかなわないと思い、付加価値をつけるためにも手間をかけてこだわりを持って栽培しています。  まずは良さを知ってもらうため、料理店などに直接足を運び、「今まで食べていた野菜と違う! 森川さんのなら!」と、今では有名料理店や保育園など数十店舗と直接契約してもらえるようになっています。

難波葱について教えてください。

難波葱は、柔らかく、ネギの香りが優しく、そして甘くてぬめりがあることが一番の特徴です。「柔らかく、ぬめりがある」特性が、機械加工に向かず、市場から姿を消していたこともありましたが、「なにわの伝統野菜」の認定も受け、再評価されています。一般的な青ネギは薬味として辛みがあるイメージだと思いますが、難波葱はフルーツトマト以上の糖度になるほどに甘みが強く、柔らかいのでネギが主体となる料理に向いています。生産者から見た特徴としては、難波葱は普通のネギより少し大きいですが、とても柔らかく、風が吹くとすぐにポキポキと折れてしまいます。そのため、風の強くなる冬の時期はポールを立てて補助します。さらに一般的な青ネギは植え付けから50〜60日程度で収穫できますが、難波葱は収穫まで最長6カ月ぐらいの期間が必要です。  近年では、直売所など市場出荷以外の流通が増え、さらに運搬技術が向上した今、難波葱の美味しさを全国的に知ってもらえるのではないかと思っています。私自身も農家になり改めて難波葱を食べてみると、「あまい…!」と、今までのネギの常識が180度変わりました。甘さ、柔らかさ、そしてその美味しさに感動しました。食べたことが無い皆さんにも、是非この感動を味わってほしいです。

難波葱のおすすめ料理を教えてください。

 是非、試して欲しいのが、『難波葱のお好み焼き』です。キャベツの代わりに難波葱を使うと甘みが強く、さらにトロッとしたぬめりが出て、ふわふわになり、本当に絶品です。大阪の粉もん文化に、大阪の伝統的な野菜である難波葱を使ったお好み焼きが新たな名物になるんじゃないかと思っています。

農業に対する思いをお聞かせください。

 農業はやればやるほど面白いと実感しています。安全安心なものを作って、「いろんな人に食べてもらえる」ことはすごい事だと感じます。デザイン設計事務所をやっていたことを知る人からは、「手に職があるのに勿体ない」といわれますが、前職の経験は決して無駄ではありません。デザイン 設計とは「ものづくり」という共通点が多く、前職の経験を生かすことができています。私は今までの『農家』という型ではなく、新しい農家のスタイルを築いていきたいです。昔の一般的な農家のスタイルは〝市場に買ってもらってなんぼ〞なので、そこから先には関与しませんが、私は今までの経 験を生かし、『作る』から『食べる』までをトータルプロデュースしたいと考えています。偶然にも弟は料理人で、近々自分の店を出すことになりました。また、前職のデザイン設計事務所での経験を活かし、店もトータルプロデュースさせてもらい、自分が作った野菜を使ってもらいます。羽曳野市駒ヶ谷地区でオープンに向けて走り出していくところです。難波葱を全国に広めるはじめの第一歩として弟と店づくりを頑張ります。そして、楽しみながら森川ファームと難波葱を広げていけたらと思っています。
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