食と農のこと食と農のこと

笑顔の実り。 vol.88(2021年6月号)
うじもと しろうさん|70歳
堺市美原区 黒山地区 氏本 志朗さん


地域農業はコミュニケーションの場

農業を始めたきっかけをお聞かせください。

 この地区では昔は大半がナス農家で、父も専業農家としてナスを栽培していました。30年ほど前から水稲中心の栽培に変え、高齢だった父から私へ徐々に引き継いできました。定年退職前 から少しずつ「あすかてくるで」に出荷していましたが、本格的に農業を始めたのは父の使っていたビニールハウスを使ってズッキーニ・ナス・トマトを作り始めた定年退職後です。

農業を行う上でのこだわりをお聞かせください。

 孫に食べさせることもそうですが、作っている側もハウス内で農薬散布をするとどうしても農薬を吸い込んでしまいます。「食べる人にも作る人にも優しい」、そういうものを作っていきたいです。ハウスでの栽培は早く収穫できるだけでなく、害虫の侵入を遮断する機能もあります。現在ズッキーニは農薬を使わないようにしています。ナスも換気窓に防虫ネットを張ることで農薬の量を減らしています。農薬は生産上不可欠なものと考えていますが、出来る限り少なくしたいです。

農業をしていて苦労したことは何ですか。

 ズッキーニを栽培し始めたきっかけは、この地域であまり出荷されていない野菜を栽培してみたかったからです。ズッキーニの温度管理は難しく、高温になると花が咲かず実がしぼみ、受粉が出来なくなってしまいます。さらに雌花は早朝の短い時間しか咲かないため、開花したらすぐに人工受粉の作業を行います。はじめの頃はうまくいかないこともあり、温度管理がダメなのか人工受粉なのか、それ以外の要因があるのかの判断が難しかったです。また、10年前はズッキーニという野菜自体の知名度が低く販売にも苦労しました。それでも諦めず出荷し続けていたところ、5年前くらいから徐々に売れるようになってきました。ズッキーニをずっと買って下さっている方はリピーターに なってくれているのかなと思うので、その期待にしっかりと応えていきたいです。ズッキーニは色鮮やかな野菜で、私も出荷する際は鮮やかな黄色と緑色のズッキーニをセットにして販売しています。ズッキーニの美味しい食べ方として、『ズッキーニの天ぷら』と『ズッキーニのハンバーグ』がおススメです。我が家の食卓にもよく登場するメニューなのでぜひ一度試してみて下さい

地域農業についての想いをお聞かせください。

 黒山地区では農道整備・水路清掃・水入れはみんなで声をかけながら共同作業で行っています。私も会社勤めをしていた時は、地元の幼馴染と近況を交換する大切な場でもあり、年上の人に作業の仕方を教えてもらえる場でした。同じ地域に住んでいてもなかなか会う機会や話す機会がなくなっている今、良いコミュニケーションの場となっています。 子供ながらに農業をする父の苦労を見ていましたが、私も定年したら農業をしたいと思っており、定年間近の時に「あすかてくるで」へ出荷者登録しました。会社勤めの時にできなかった分、定年退職した今は地域農業に貢献してお返ししたい気持ちが強いです。私が栽培・収穫し、妻が出荷作業をしてくれていて夫婦で役割分担をしながら出荷しています。「あすかてくるで」が無かったら、ズッキーニの栽培もしていなかったでしょうし、市場と違って少量で規格が揃っていなくても販売できる直売所があるのは本当にありがたいことです。これからも夫婦2人で楽しく生きがいとなる農業をしていきたいです。
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