笑顔の実り。 vol.85(2021年3月号)
まつい いさおさん|74歳
河南町中地区 松井 功さん
若い仲間とのコミュニケーション
農業を始めたきっかけはなんですか?
父がミカンの専業農家だったので、子供の頃から家業として手伝っていました。農作業は結構好きな方で私が中学生の頃には市場に同行したり、父の代わりにトラクターに乗ったりしていました。父は昔の職人気質の口下手な人で、新しく販路を拡大することや交渉することが苦手でしたので、中学生の時から私が市場の人との交渉を行っていました。市場ではいかに仲買人の目につく場所に置いて、競り落としてもらえるかが、カギになってくるので、子供の身でたくさんの大人の中に入って場所取りをするのは大変でした。しかし、「子供が一生懸命頑張っているから」と場所を譲ってもらったり、手伝ってもらったりと周りの出荷者の方々から可愛がってもらっていたことを今でも覚えています。
そんな学生時代を過ごし、社会人として営業職に就いた際、どのようにして新規取引先を増やし、販路を拡大するか悩みました。その時、私は自分を知ってもらうため、会社の同僚・取引先関係者等数十人を自宅の圃場に招きました。圃場には父が育ててくれているミカン・梅・栗・タケノコなどがあり、そこで収穫体験や食事をしながら、その場で商談を進めやすくしていました。
私が50代の頃に父が他界し、父が管理してくれていた沢山のミカンの木はどうしても手入れが行き届かず、半分ぐらいまで減らしてしまい悔しい思いをしました。平日は会社勤務しながら土日は農作業に明け暮れる日々の中で、同僚や会社の取引先、知り合いからの注文があったので、少しずつ水稲中心にして受け継いだ農地を守ることができました。
農業を行う上でのこだわりはなんですか?
親類・知人だけでなく、多くの地域の人にもより美味しいものを食べてもらいたいですね。特に土づくりには力を入れています。中でも肥料の量にこだわっていて、土にこだわり始めてから収穫量が増えました。失敗することがあれば大体土づくりが悪かった時です。失敗をしないためにも土づくりは一番重要だと感じています。私の住んでいる地区は葛城山から湧き出した水が豊富に流れていて水田を潤しています。農業をする上で、土・水の質は大切にしています。
友人3人と原木椎茸を作ろうという話になった際には、私が山の所有者に交渉しに行き、山の草刈りなどの管理を手伝う代わりに木を何本か譲って頂くということもありました。現在、農業を行う上で子供の時から市場で交渉をしていた経験が生きていると感じます。毎日圃場に行って、農業仲間で話しながら情報交換をすることで、新たな発見があったり一緒に新しい作物に挑戦をしたりととても楽しいです。
地域農業についての想いは?
定年後から10年余り実行組合長として、地元の農業を見続けてきて、年々耕作を断念される方が増えてきました。そんな中でも、自分より若い世代の人が新しくトラクターを買って、耕作放棄地で新たに農業を始めようとしてくれる人もいます。そのきっかけの一つとして、朝の農業仲間でのコミュニケーションで自分より若い世代の人と対話していくことが重要だと感じています。
普段からコミュニケーションをとっておくことで、圃場の整備の手伝いや、わからないことがあれば聞きに行きやすいような存在でありたいと考えています。これからも実行組合の若い人たちとお互いの話をして生産意欲を高めていきたいです。