食と農のこと食と農のこと

笑顔の実り。 vol.82(2020年12月号)
ふじい としあきさん|76歳
藤井寺市野中地区 藤井 利章さん

地元の特産品づくりへの挑戦!

農業を始めたきっかけについてお聞きかせください。

両親が専業農家で、米、トマト、キュウリ、ナスを青果市場に出荷していました。自分が農業の手伝いを始めたのは中学生くらいの時で、収穫などを手伝うと両親が喜んでくれていたことを覚えています。当時は子供ながらに、両親が作る野菜の美味しさや農業に対しての努力に偉大さを感じていました。  私自身は、家や圃場の目の前に昨年世界遺産に登録された百舌鳥・古市古墳群がある環境で毎日歴史を感じながら育ってきました。高校時代の恩師は歴史好きな人で、その影響から考古学という分野があることを知りました。藤井寺にはこんなに歴史的な古墳があるのに、地元に専門家がいないじゃないか!と思った私は、自分が地元の研究をして専門家になりたいと両親に伝えました。長男である私が家業の農業を継ぐと思っていたはずなので、その夢を快諾してくれた両親には感謝しています。メインテーマを「古墳時代」として考古学の勉強をはじめ、橿原考古学研究所に勤め始めました。そんな中、私が27歳の時に父が他界。農業のことを何も知らないまま農地を引き継ぐこととなったことが農業を始めたきっかけでした。

農業をしていて大変だったこと

やはり農業と仕事の両立が大変でした。研究職を続けながら、農業と両立させることは本当に難しく、しんどかったです。そんな中、母親が当時出始めたばかりの田植え機、コンバイン、トラクターを購入しました。元々機械いじりが好きだった私が農業を継ぐことになったため母が買ってくれたのだと思います。この出来事は私が農業の楽しさを知るきっかけとなりました。母が買ってくれたこれらの機械がなければ私は農業を続けることは出来なかったと思います。そのトラクターはクボタが売り出した当初のものですが、とても丈夫で50年近く経つ今も大切に使っています。

農業に対する思いをお聞かせください。

現在、野菜・果樹合わせて20品種以上の作物を育てており、少量多品種栽培を行っています。基本的には自家消費できる分だけ栽培しているのですが、自家消費できない分の野菜や果物はご近所の方に分けていました。こちらはありがとうと言ってもらえたらそれだけで満足でしたが、貰う側は「何かお返ししないと……」とだんだん気を使って下さるようになってしまいました。それなら安く販売したほうがお互い気を使わなくて済むのではないかということで、実行組合の中から有志が集まり地元に朝市会が生まれました。  朝市会では毎週土曜日の朝8時半ごろから野中の外環状線の高架下か藤井寺支店の駐車場で朝市を開催しています。この朝市会から地元農業を少しでも盛り上げられたらと思っています。

これからの目標を教えてください。

羽曳野、富田林、道明寺にはブドウ、ナス、イチジクなどの特産品がありますが、藤井寺地区は都市化が進み、昔と比べて特産品がほとんどない状態になってしまっています。藤井寺地区の農業をもっと活性化したいという思いから、朝市会のみんなで藤井寺地区の特産品を何か作れないかと話し合ったり、自分が率先して栽培に挑戦してみたりしています。私にとって、この話し合いが良い情報交換の場となっています。そして様々な失敗と試行錯誤を繰り返したのち、今は藤井寺の風土にあうショウガの栽培に挑戦しています。いざ栽培してみると種芋の越冬や質の良いものを作ることは本当に難しく、様々な方法を試してみているのですが四苦八苦させられています。  でもいつか自分が栽培に成功し、それを朝市会のみんなで作って地元に広め、藤井寺地区の特産品にしたいという目標に向かい諦めずに挑戦し続けたいと思います。 
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