食と農のこと食と農のこと

笑顔の実り。 vol.72(2019年12月号)
きたの ひろゆきさん|50歳
堺市美原区 菅生 北野 裕之さん

もっと!南大阪を美味しいオリーブの町に

オリーブとの出会い

オリーブと出会ったのは、45歳の時だ。造園と農業を営んでいた北野さんは、樹齢千年のオリーブ古木を買い付けるため、スペインを訪れていた。そこで、本場のオリーブオイルを口にした。日本で食べるオリーブオイルとは、全く違う風味と味がする。感動した北野さんは「本物を日本にも伝えたい」と考えるようになった。  スペインでオリーブオイル工場を見て回ると、場所によって味や清潔さ、職人の情熱にバラつきがある。理想のオリーブオイルを探し歩いた結果、ナバーラ州のオリーブ農園にたどり着いた。ピレネー山脈から流れる水が育てるオリーブは、搾りたての芳醇な風味がする。まさに、北野さんが探し求めた味だった。  本物のエキストラバージンオリーブオイルは、オリーブの果汁を絞っただけのピュアなものだ。しかし、日本に届くまでに様々な商社を挟むと、熱や時間の影響で品質が落ちてしまう。本場の味を伝えるため、スペインの農園で直接オイルを買い付け、美原区でお客様の前で充填し、直販した。こうして生まれたのがブランド「YURINA OLIVE」だ。これからは女性の時代だと考え、娘の結子さん「YU」、理子さん「RI」、妻の奈代子さん「NA」から頭文字を貰い「YURINA」と名付けた。美味しいオリーブオイルを食べて、女性に美しくなって欲しいという気持ちが込められている。

地元産のオリーブオイル

スペインの温暖な気候は、大阪の気候に通ずるものがある。日本の小豆島でも作られているし、大阪でもオリーブを育てることは可能だ。北野さんは、自作したオリーブで、オリジナルのオイルを作りたいと考えるようになった。オリーブは庭木として人気がある。前から、スペインや小豆島から仕入れた苗木を育てていたので、栽培のノウハウもあった。 「簡単に作れるだろうと思っていましたが、塩漬けを作るのも、オリーブオイルなどに加工するのも予想以上に大変でした」  収穫の時期は10月~12月ごろ。脚立に登って手作業で実を採る。傷が無く、形が美しい実は1本に30粒程しかない。実を100キロ収穫しても、採油量は良くて全体の7~15%ほどだ。オイルがいかに貴重か良く分かる。  「2~3年後には、オイル加工まで全て自分で出来るようにしたいです。もっと収穫量を増やして稼働率を上げ、ドイツ製の高価な搾油機を買いたい」  オリーブの塩漬けも作っている。実の柔らかさや塩気、色など、理想の味になるまでかなりの時間を費やした。冷蔵庫の中には、様々な濃度の塩水に浸かったオリーブが並んでいる。今も実験を繰り返しながら、より良い味を追い求めている。  「スペインと同じ規格で搾油出来るように、オリーブを研究したいと立候補した社員と現地で学びました。今後は、若い世代をオリーブマイスターとして育て、継承していくことが課題です」手間をかけ、やっと完成した「堺産プレミアムオリーブオイル」は今年度、堺市のふるさと納税の返礼品に選ばれた。また、堺市優良観光みやげ品「堺逸品」にも選定されている。 「6次産業化は、作っても販売計画が伴わないことが多いのが弱点。YURINAブランドはBtoBやBtoCでは無くDtoC(※)で販売します」 ※Direct to Consumerの略。メーカーがECサイトを通じて商品を直接ユーザーに販売すること

南大阪をオリーブの町に

北野さんは後継者不足などで荒地になった耕作放棄地にオリーブの木を植える活動をしている。オリーブを植えれば景観が美しくなり、近隣の農地への被害も抑えられる。地域の課題に取り組んでいるとして、昨年の7月からは堺市から支援を受けられるようになった。  「今後、耕作放棄地をオリーブの木で埋めて、南大阪をオリーブの産地にしたい。小豆島のように、各家庭で育てたオリーブをオイルに加工するなど、誰もが気軽で安価に食べられる物にしたいですね」  一時的な流行りではなく、一つの文化として、オリーブを南大阪に根付かせたいと考えている。YURINAプロジェクトは、次の段階に挑もうとしている。
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